知財・特許業界で仕事をしたい人のための応援コラム

第18回 知財業界における派遣という働き方

 当社ブライナでは、去る6月1日に労働者派遣事業の許可を取得し、労働者派遣事業を開始いたしました。今回のコラムでは、我々が知財業界においてどのような目的で労働者派遣事業を開始したのかについて、お話したいと思います。

 世間一般では、「派遣」というとあまり良い印象を持たないことが多いかもしれません。「派遣」が若年世代のワーキングプアの一因と言われ、日雇い派遣を禁止しようとする動きもあります。これらの点について、私は異論があるわけではありません。また、知財業界でキャリアアップをお考えの方の多くが、正社員ないし正規職員としての転職を前提としているのも確かです。したがって、我々としても、まず有料職業紹介事業の許可を取得(平成18年4月5日)し、知財業界において正社員ないし正職員の紹介事業を行ってまいりました。主に都内の特許事務所や大手企業の知財部に対して、特許実務経験者ないし開発経験者の方を中心に紹介を進め、この2年間で事業としても軌道に乗ったと実感しているところです。

 しかし、現実的にはなかなか人材紹介事業のスキームに乗りにくい方々がいらっしゃるのも事実です。その一例が、特許業務未経験者の方々です。特許事務や外国企業とのレターのやりとり等については、意欲やポテンシャルがいかに高い方でも実務経験が全くないと、採用側としてはやはり躊躇してしまいます。私は特許事務所を経営している立場にもありますので、その心情は十分理解できます。全くの実務未経験者を職場に迎えると、付きっきりで業務を教えないといけません。そうすると、既存業務が滞ってしまったり、思いがけないトラブルが発生したりするなど、悪循環に陥る可能性があります。不安の種はそれだけではありません。その実務未経験者が、知財の仕事に適応できなかった場合に、その方の社内での待遇をどうするのかというデリケートな問題も出てくるのです。こういうこともあって、特許業務に対する意欲やビジネス能力が高い方でも、特許業界に転職するチャンスが得られない方が沢山いらっしゃいます。

 その点において、派遣契約は期間契約ですから、契約期間の内に実務未経験の方は自分の適性を見極める一方で、雇用側もその方の適性を判断するととらえれば合理的と言えます。特に、今まで、人材紹介事業のスキームではなかなかチャンスが得られなかった未経験者の方にも、とにかく特許業務に触れてもらえる機会を提供できる点では、有意義な事業だと考えています。
 さらに、紹介予定派遣というスキームにより、派遣期間が終了した段階で双方合意の上で正社員・正職員となるステップを踏めば、両者にとって間違いの少ない意思決定を行うことが可能となります。このように、実務未経験者に対して知財業界への門戸を広げるという意義を、私はこの人材派遣事業に求めています。

 次に人材紹介事業のスキームに乗りにくい層は、定年間際ないし定年を過ぎた方々です。
これらの方々は、貴重な実務経験と意欲、能力を持たれています。労働人口が今後減少していくことを考えると、何とかして、このような方々の活躍の場を確保していく必要を痛切に感じます。高い専門性が求められる知財業界では、豊富な経験と知識をお持ちの方々が必ず必要なのも事実です。しかしながら、現在の企業組織(特許事務所も含め)では、既存社員の定年延長に取り組むのが精一杯であり、新たに定年を過ぎた方を正社員として採用することがなかなかできないようです。
 そこで、是非こうした方々には当社サービスにご登録いただき、当社としても派遣社員として新たに就業できる機会を提供していきたいのです。派遣社員であれば、その方が得意とする分野に職務範囲を限定したり、1週あたりの労働日数や1日あたりの労働時間を調整することができます。また、組織を構成する正社員の年齢構成にも影響を与えません。
 この世代の方は、どちらかというと社会貢献や地域貢献を目的として地域企業の発展に役に立ちたいと感じている人が多いのも事実です。したがって、労働時間や職務範囲等を調整することで、双方の目的に見合った合理的な金額に決めやすいはずです。私たちも、派遣紹介事業者として、派遣の受け入れ先にご理解いただけるよう、これから根気強く交渉していく必要がありますが、着実に前進させていきたいと考えております。

 当社が手がけている、中小企業に対する知財コンサルティングも、実はこの派遣契約が適しています。このような企業は知財部門を持たないことが多いので、当社ではプロジェクトチームを編成して、知財部門の業務が動き始めるまでの一定期間顧客企業に張り付きます。知財コンサルティング業務のこうした特性から、プロジェクトチームのメンバーは案件ごとの個別派遣契約で業務についていただくのが合理的です。知財が好きな方に対して、知財業界で生涯働ける機会の提供ができれば、私にとってこれ以上の喜びはありません。

[2008/07/04] 知財ナビより転載

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