知財・特許業界で仕事をしたい人のための応援コラム

第3回 特許業界も女性パワーが台頭 意欲的な女性から寄せられる、多数の相談

 昨年9月に知財情報局でスタートした「特許キャリア相談」は、おかげさまで予想以上の反響をいただいております。実に様々な経歴をお持ちの方から相談を受けましたが、女性が多いことは、特筆すべきことでしょう。
 私は平成10年まで弁理士試験の予備校に通いましたが、当時、教室を見渡しても女性の数はせいぜい1割いるかどうかといったところでした。実際、私が弁理士試験に合格した平成10年は、合格者146名のうち女性はわずか22名でした。「特許キャリア相談」では、女性からの相談が2割を超えており、特許業界でも女性の積極的なパワーというものを強く感じます。
 相談を受ける女性に共通して言えることは、知的好奇心の旺盛さとキャリアアップ意欲の強さです。これは、寄せられる文面からもひしひしと伝わってきます。相談いただく際は、本人の基本スキルについて記入してもらうのですが、英語を得意とする方が多く、TOEICスコアが800から900クラスの方が少なくありません。しかし、残念なことに現在の職場で自身の能力を十分に発揮できていない方が多いのではないかという印象を受けます。

特許事務職には、「スケジューリング能力」が必須

 ここで、女性からの相談で多く寄せられる、代表的な事例を3つご紹介しましょう。
 まずは、特許関係の「事務職(以下、特許事務職)」を目指そうとしている方からの相談です。特許事務職にはどのようなスキルが求められるのでしょうか。特許事務職は、技術分野でのバックグラウンドを持っていなくても、一般的な事務の経験があり、特許業界での仕事を希望される方であれば十分狙える仕事です。素養としては、「スケジューリング能力」、「正確&迅速に作業する能力」、「仕事の優先順位を決める意思決定能力」が必要になります。そのうち、「スケジューリング能力」が最も重要です。何しろ、特許の世界では、たった1日の手続の遅れによって権利が消滅してしまうこともあるのです。権利が消滅してしまうと、新たな事業の芽を摘んでしまうことにもなりかねません。したがって、スケジュール管理がルーズな人には、特許事務職は向いていないかもしれません。また、作成した文章にミスがあると、重大なトラブルに発展することもあり、慎重かつ正確に仕事をこなす能力が必要になるでしょう。担当によっては、海外の特許事務所との英文レターによるやりとりも日常茶飯事になりますので、正確な英文レターを素早く作成できる程度の英語力は必須となります。
 さらに、特許事務のスペシャリストとしてレベルの高い仕事をしていきたい方への期待、それは、特許制度の詳細な知識を駆使し、自らの判断で主体的に意思決定を行うことができることです。つまり、上司である弁理士に対して、自らの結論を携えて事務手続きの相談ができるレベルです。弁理士の右腕としてここまでしてくれると、弁理士としては実務に集中することができ、大変助かります。私の経験からも、特許事務所では、そのような特許事務のスペシャリストが1人以上は必要だと感じています。

文系で弁理士を目指す方は、弁理士試験合格後のビジョンを明確に

 次に、文系出身者で弁理士を目指す方からの相談です。例えば大学でも、女性は男性以上に文系傾向が強いかと思いますが、文系出身者の場合、弁理士資格の「試験」自体、つまり「弁理士試験に合格する」ことが目的化してしまう方が、中にはいらっしゃいます。「弁理士として、何をしたいのか」が、明確でないケースです。どんな難関な資格でも、試験の合格自体はゴールではなく、スタートにすぎません。その意味で、将来、弁理士として働く自分の姿、やりがいが不明確な人は、その先行きが多少心配になってしまいます。
 では、弁理士試験合格後に、弁理士としてどの分野でどのように活躍したいか。中には、意匠や商標に比べて、特許は活躍の場が多く、その分だけ沢山稼げるという理由で、特許の専門家を目指そうとする方もいるかもしれません。しかし、自分の進むべき道は報酬や就職口の多少のみで決めるべきものでないと、私は思っています。文系出身でも、弁理士として成功されている方はもちろん多数いますが、それらの方は、熱意や仕事に対する目的意識が高いのが特徴です。そうでないとやり抜けません。特に、文系の方が特許の仕事をしようとした場合、知識不足のために技術理解の壁を打ち破れないケースも考えられ、弁理士試験合格後でも理系大学の夜間部に通うなどの努力が必要となります。

まずは、専門分野を極めることから

 最後に、理系出身の中でも「化学」を専攻していた女性からの相談です。私の専攻していた機械系をはじめ、総じて理工系学部では女性比率が低い中、化学系だけは、私の学生当時から女性が比較的数多く専攻している分野でした。化学専攻の女性から寄せられる主な相談内容としては、化学分野の場合、特許出願が電気・電子分野に比べ少ないことを心配したものが多いです。実際に、化学などの素材を中心とした分野では、実験に裏付けられた数少ない基本発明を大切に権利化する傾向があります。その他の相談内容としては、化学分野以外の知識が無いために、電気や機械などの他分野の技術へ対応できないことへの不安です。こうした相談は、実際にその通りかもしれません。しかし、例えば我々がご紹介できる特許事務所の中にも、化学分野を中心に豊富な実績を持つ特許事務所は数多くあります。基本的に、「まずは化学分野を極める」という強い気持ちを持って、新たな技術知識を吸収していけば、化学分野だけでも十分活躍の場があると思いますし、もちろん、他分野で活躍する可能性につながります。個人的な見解ですが、他分野への発展のチャンスは、まず1つの分野に特化して礎を築き上げることから始まります。実際、そのような機会を、クライアント側が提供してくれるケースが数多くあります。「他分野で大変でしょうが、貴方に是非この案件の権利化をお願いしたい」と思わせるレベルにまで専門分野での能力を極めることが先決でしょう。まだ20代と若い方であれば、専門分野を極め、どんどん新たな技術分野に挑戦するべきでしょう。

[2006/04/21] 知財ナビより転載

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