知財・特許業界で仕事をしたい人のための応援コラム

第6回 新卒学生が、知財業界へ積極的に進出する時代 -アナタは、特許事務所派?それとも企業派?-

 「知財キャリア相談」の相談者の中には、大学ないし大学院在学中の方も数多くいます。学部別では、やはり工学部が最も多いですが、法学部をはじめ文系学部の方もいます。彼らは、今、卒業後すぐにでも知財関連の職に就きたいと真剣に考え、実際にアクションを起こしているわけです。
 そこで今回は、在学中の学生の皆さんを少し意識して、お話したいと思います。

大学内で高まる知的財産への意識

 月日が経つのは早いもので、大学(学部は工学部)を卒業してもう10年経ちますが、私が学生だった頃は、工学部でも知財関連職に絞って就職活動をする人は、少なかったと思います。何しろ工学部の講義で特許権について触れることがほとんどなかったのですから、当然のこととも言えます。今では、特許権に関する講義が理工系学部、法学部の履修科目の中にも登場するなど、大学における知的財産権に関する教育は、この10年間で驚くほど変化しました。一方、理工系学部を擁する大学を中心に、教育以外でも、産学連携の推進、知的財産本部・TLO(技術移転機関)の設置など、大学経営の観点から学内発の発明や技術を大学の資産として重要視し、保護・有効活用するための施策を積極的に打ち出しており、知財に対する意識は学内全体に高まっているとも言えます。
 私も、埼玉大学の共同研究センターや知的財産本部に3年ほど関与した経験がありますが、現在、大学の先生方は知的財産に高い関心を持ちだしています。大学での研究成果を特許出願することは、もはや当たり前の時代になりました。したがって、そのような先生の下で研究に励む学生の方も、自ずと知的財産本部の担当者や弁理士と接触する機会が増えています。

今、特許事務所は、有望な新卒学生を求めている

 しかしながら、例えば特許事務所への就職状況を見てみると、大学院修了者も含め、新卒が採用されるということは、まだ一般とは言えません。ただ、新卒を採用しようとする特許事務所は確実に増えつつあることも事実です。その背景の1つに、特許関連業務が多様化する中、「優れた素質を持った将来の戦力をいち早く確保して、1人前に鍛えて上げる」エキスパートの育成と、「様々な顧客ニーズに対応するための組織を作る」事務所としての総合力が、現在の特許事務所に求められていることもあるでしょう。特許事務所としても、将来を見据えた人材戦略が必要になる時代になりました。

知財プロの王道?「大学・理工系学部 → 企業・研究開発部門 → 特許事務所/企業知財部」

 在学中の方で将来、特許明細書作成のプロ(つまり、弁理士)を目指すのであれば、(1)大学・大学院などにおいて、理工学分野における研究を経験 (2)企業の研究開発部門において3〜5年程度の実務経験 (3)特許事務所において特許明細書の作成に腕を磨く、というキャリアパスは理想の1つかもしれません。特に(1)(2)について、電気、電子、通信、制御、物理、化学などの専門的な技術知識は、特許明細書を作成するための「強靭な足腰」となります。遠回りとはいえ、将来特許実務を行う上で、大いに役立つことでしょう。
 特許事務所に入所後、特許明細書作成の要領についてはOJTを通じてじっくり身につけていくことになります。

 卒業後すぐに企業で知的財産関係の仕事に就きたい場合も、同様に在学中の理工学分野での研究経験が武器となることは間違いありません。しかし、企業によっては、部門ごとに採用活動を行っているケースもあれば、入社後に適正を見てから配属するケースもあります。したがって、当初は知的財産関連職としての採用がなくとも、中長期的な視野で自己のキャリアを考え、入社試験に臨むことが肝心です。
 一方、文系学生の場合、入社試験時や入社直後に技術的な専門性を発揮することは難しいので、弁理士試験や知的財産検定などを通じて、知的財産権に関する法律知識をアピールしたり、卒業論文や修士論文で知的財産権に関連した研究を実施したりするなど、現状の範囲内での努力は必要です。技術的な専門分野や知識は、入社・入所後に、人一倍努力して身につけていくしかありません。

新たな知財プロの王道?「大学・理工系学部 → 特許事務所 → 企業知財部」

 企業と比べると特許事務所に対しては、「規模が小さくて不安定」、「人間関係が難しい」といったマイナス・イメージを抱いている方が、学生の皆さんの中にはいるかもしれません。イメージすら涌かない方もいるかもしれません。しかし、企業内の知財業務と比べた場合、特許事務所の業務は、比較的個人のスキルに依存する自己完結型の業務が多いので、上記のような不安は、すべて自己の努力次第ですべてクリアできる職場だとも考えられます。また、「いったん小さな特許事務所に入所したら、一生、企業の知財部へ転職できない」なんてことも、杞憂です。
 「社会に出てすぐに、知財のプロを目指す」という意味では、新卒で特許事務所へ就職することにはそれなりの合理性があります。知財業界では、とにかく実務経験を積むことが最も重要です。OJTが徹底している特許事務所は、専門スキルを比較的短期間で身につけるためには最適な職場と言えるでしょう。
 以前と比べて現在では、企業から特許事務所への人材移動だけではなく、特許事務所から企業への人材移動も活発になってきています。「ファーストステップで、特許事務所で特許明細書の作成のプロとなり、セカンドステップとして企業の知財部で自社技術の特許戦略の構築など、特許事務所では経験できないような仕事にチャレンジ・・・・・」。といったシーンも、今後ますます増えていくのではないでしょうか。

[2006/06/08] 知財ナビより転載

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